早期より体を起こすこと=肺合併症(肺炎・無気肺)の予防
本日は術後のリハビリ遅延因子の一つである、術後肺合併症についてお話します。
手術は人工呼吸器を用いて呼吸を管理していますが、術後の使用期間が長いと人工呼吸器関連肺炎(VAP)を引き起こす場合があります。さらに、早期に人工呼吸器から離脱が出来ても、誤嚥性肺炎になるケースもあり、術後の肺合併症予防の管理は様々な工夫が必要となります。また、肺炎管理は出来ても、術後寝たきりの状態が続くと、肺は各臓器からの圧迫を受け、酸素を取り込む場所が小さくなります。そうすると、「低酸素状態」となり、回復の妨げとなるのです。
では、どうすればこのような合併症を予防することが出来るのかというと、早期に人工呼吸器から離脱をするということ。これは、術後の容態が安定しないと困難ですが、当院では当日の夜までには離脱することが多く、遅くとも翌朝には抜管しています。そして、肺にとって受動的な各臓器圧迫から逃れるため、(座ったり、立ったり、歩いたりと)、早期から体を動かし、余分な合併症を防ぐ管理を行っています。余談ですが、術後一日目の肺活量は術前の48%まで低下し、その後、三週間で約88%まで回復します。術後は吸う力、貯める力、吐き出す力が衰えているわけですね。
術後の回復のポイントは、介入者が人間の自然治癒力を知り、時期に応じてある部分を的確に補うことです。今回は肺合併症に的を絞ったお話をしましたが、我々は科学的な側面と今までの経験から最良の方法を導き出し治療に当たっています。心臓手術、そして術後管理と、このチームにしか出来ないことがあります。悩まれたら、色々とご相談ください。
德田