(相談者質問)
近くの病院で心臓カテーテル検査を受けたら冠動脈の二股に
分かれたところに狭いところがあるので、治療が必要だと言われ
ました。ただカテーテルの治療はかえって危険かも知れない、
手術の方がいいのではないか、と言うことで、相談しましょう
と言われています。
手術はどうしても受けたくないのでどうしたらいいでしょうか。
(回答) 回答者:南渕 明宏
手術はどうして受けたくない、というのは『何とかカテーテル
検査でしのぎたい』というお気持ちだと思います。
つまり『上手な循環器内科の医師なら難しい病変でもスイスイ
治療できるのではないか』とお考えのようですが、そんなことは
ありません。
現在、カテーテルによる治療は夥しい経験の末、左冠動脈が二股
に分かれている部分などではカテーテル治療は当日は切り抜けられ
ても、その後再発と言うさらに厳しい病変になって治療が難しく
なることが知られていて、何でもかんでもカテーテルで治療する
循環器内科医は批判を避けられないでしょう。
それと、手術は最後の手段、できる限りカテーテルで時間を
稼いで、どうしようもなくなったら手術でもしようがない、とも
お考えかも知れませんが、それも間違いです。それは問題を
先延ばししてどんどん状況を不利にしているだけです。
冠動脈のバイパス手術が安全で確実で、一度手術を受けてしまえば
それで問題は100%解決する、という場合もあります。
カテーテル治療をすればするほど冠動脈全体にキズが付いて動脈
硬化が進んだり冠動脈の壁が先端の方まで分厚くなったりして、
手術がやりにくくなります。あるいは、手術の効果が長続きしない
ことになります。つまり大切な冠動脈の寿命を短くしてしまう
ことになるのです。
もちろん、カテーテル治療に適した病変もあります。何もしないで
スタチンという薬剤を飲み続け冠動脈の病気が進まないように
管理する、という方法もあります。
闇雲に手術を忌避するのではなく、安全で確実な方法とは何か、
をよく考えて勇気を持って一歩踏み出して下さい。
野球の試合に例えれば、15点も取られて、9回に「ピッチャー
代わってよ。がんばって勝ってね」などと頼まれるような
バイパス手術の依頼をこれまで何度も受けてきたので
こんなことを言うのです。